風呂場って、昔から俺の“ひとりの時間”だった。
家に誰かがいても、風呂のなかだけは完全な個室。
だから昔から、自然と風呂場オナニーが習慣になっていた。
その夜も、仕事帰りで疲れきっていた俺は、
いつものようにスマホを持ち込み、湯船に浸かりながらお気に入りの動画を再生していた。
ジャンルは人妻もの。歳上女性が男をじわじわ責める系だ。
湯気に包まれながら、静かに、でも確実に気持ちが高まっていく。
行為を終えたあと、特に片づけもせずシャワーで軽く流して終了。
スマホの履歴だけ消して、すっきりした気持ちでその夜は眠りについた。
事件は翌朝だった。
休日の朝、ソファでぼーっとしていた俺に向かって
嫁がぽつりと言った。
「今日、排水溝の掃除したんだけどさ…なんかヌメヌメしてて、生臭かったよ?」
俺はコーヒーを持つ手がピクリと止まった。
「ちゃんと流したと思ってたんだけどな……」
そう続ける嫁の声は、いつも通りのトーン。
でも、わざわざ俺に“報告”してきた時点で、
あれが何の匂いだったか、彼女には察しがついていたはずだ。
目は合わなかった。
責めるわけでも、問い詰めるでもなく、ただ淡々と。
それが逆に、効いた。
それ以来、俺は風呂場で済ませることはやめた。
というより、できなくなった。
あの排水溝の掃除と、
あの何気ない嫁のひとことが、今でも忘れられない。